香りが語る禁断の恋:イコールラブ『ラストノートしか知らない』歌詞考察

イコールラブ(=LOVE)の「ラストノートしか知らない」は、切なくも複雑な恋心を描いた一曲です。
指原莉乃が作詞を手掛けたこの曲は、恋の苦悩や葛藤を繊細に表現し、聴く者の心に深く響きます。
特に注目すべきは、主人公が抱える「禁断の恋」に対する心情と、その中で揺れ動く感情の描写です。
本記事では、歌詞の考察を通じて、主人公がどのような心理状態にあるのか、そしてその恋の行方を追いかけます。

2. 歌詞の心理描写と動静

禁断の香りと夜の恋

「ラストノートしか知らない」は、香りを通じて主人公の恋が描かれています。
香水の香りは、主人公が恋する相手との夜だけの密会を象徴しています。
この香りは他の誰も知らない特別なものとして描かれていますが、それは同時に他の女性が知りえない「夜にしかない関係」の象徴でもあります。このことは、主人公が彼の本命ではないという切なさを強く暗示しているのです。

例えば、「淡い香り 熱い体温に溶けて君がいる みんなは知らない私だけの香り」という歌詞から、彼女が感じる特別さと同時に、その背後に潜む孤独感が見え隠れします。
彼女がこの香りを「特別」と感じるのは、その香りが彼と共有した夜の記憶と結びついているからです。しかし、この特別さは彼女だけが感じているものであり、彼の本命ではないことを暗に示しています。

夜に引き寄せられる主人公の心情

「家路急ぐ人と私はすれ違う 駅の光に吸い寄せられた」という歌詞では、周りの人々が家に帰る時間に逆行して駅へ向かう主人公の姿が描かれています。
彼女が吸い寄せられるように駅へ向かう理由は、彼と会う期待が強いことを示しています。
また、「君が会いに来てなんて噓だよ 私が会いたい」というフレーズでは、主人公が本音を隠しきれずに彼に会いたい気持ちが溢れてしまう瞬間が表現されています。

この場面からは、主人公が彼に対して強く依存していることが伺えます。
彼女は、自分が本当に望んでいるのは彼と会うことであり、それが叶うことで日常の疲れや寂しさを埋めようとしているのです。この依存は、彼に対する期待感と、彼に認められたいという欲求が根底にあります。
しかし、その期待感は決して満たされることがないため、彼女はいつまでも彼を求め続け、駅に向かい続けるのです。

自分だけが知る「ラストノート」

曲のタイトルにもなっている「ラストノート」は、主人公だけが知る彼の香りであり、それは夜の密会の象徴でもあります。
「みんなは知らない私だけの香り」という歌詞からは、主人公がこの関係に特別さを感じつつも、その切なさを感じています。
この香りに恋をしてしまう主人公は、彼に対する強い思いを抱きながらも、自分が本命ではないことをどこかで悟っているのです。

また、「夜に会いたくなるのは君だけで」というフレーズでは、彼との関係が夜だけに限定されていることが強調されます。
彼女は彼と過ごす時間が夜に限られていることを受け入れつつも、その状況に対する不満や悲しみが滲み出ています。彼女が夜の時間を大切にする一方で、昼間の彼がどのように過ごしているのかを知ることができないという事実が、彼女にさらなる苦しみをもたらしているのです。

禁断の恋への執着と諦め

歌詞全体を通じて、主人公が抱く恋は一方通行であり、報われないものであることが浮き彫りになります。
「抱きしめられ ダメって分かってる」というフレーズでは、主人公が頭では彼との関係が良くないことを理解している一方で、心が彼を求めてしまう葛藤が見えます。
彼女は理性ではこの関係が間違っていることを理解していますが、感情は彼を求め続けてしまうのです。

さらに、「気づいたら ラストノートに恋をしてしまった」という歌詞では、彼女が自分でも気づかないうちに、彼の香りと夜の密会に恋をしてしまっていたことが明らかになります。彼女はこの恋が「終わりに向かって灰のように落ちる恋」であることを理解しつつも、その恋にしがみついているのです。これは、彼女が彼との関係を断ち切ることができない依存と執着を示しており、彼女がその関係を終わらせることができない苦しみを表現しています​。

このように、「ラストノートしか知らないままでいい」という結論に至る主人公は、たとえ彼が本命の女性のもとへ戻ることがあっても、今の関係を続けたいと願っているのです。
彼女は、この関係が続くことで、自分の孤独や不安を一時的にでも癒すことができると信じています。
しかし、この関係が続く限り、彼女の心は満たされることはなく、永遠に彼を追い求めることになるでしょう。

3. まとめ

「ラストノートしか知らない」は、夜だけの恋に縛られた主人公の切ない心情を描いた楽曲です。
彼女が抱える禁断の恋は、香りを通じて彼との関係に強く結びついていますが、その関係が持つ儚さや切なさも同時に描かれています。
この歌詞を通じて、聴く者は主人公の苦悩や葛藤に共感し、彼女の心の揺れ動きを感じ取ることができるでしょう。

イコールラブのこの曲は、恋愛に対する複雑な感情を持つ人々にとって、特に共感を呼ぶ作品です。この曲を聴くことで、自分自身の過去の恋愛や現在の状況と重ね合わせ、深い感情の揺れ動きを感じることができるのではないでしょうか。